第34回日本新生児学会抄録

Partial Liqud Ventilation の基礎的検討
―perflubronの細胞毒性に関する検討―

長野県立こども病院新生児科1)
小諸厚生総合病院小児科2)
○山崎崇志1)2)、古庄知己1)、五石圭司1)
岩田欧介1)、松沢重行1)、笹野拓也1)
中村友彦1)、杉浦正俊1)、田村正徳1)
株式会社八光電機製作所技術部生化学研究課:滝沢実

緒言
我々はすでにPartial Liquid Ventilation(以下PLV)の動物実験に用いていたFluorinertTM84について、ハムスタ−の肺癌由来細胞であるV79およびヒトの肺癌由来細胞のSQ−5を用いて細胞毒性試験を行い、細胞毒性がないことを証明してきた。今回は海外においてPLVですでに臨床応用されているperflubron(LiquiVentTM)について同様の細胞毒性試験を行ったので報告する。

方法

@V79(またはSQ−5)を継代培養する。A対数増殖期にある細胞を0.2%トリプシンで剥がし計数する。B必要枚数用意した60mmディッシュ内にコラ−ゲン溶液と培養液(MEM+10%FBS)でコラ−ゲンゲルを作る。Cディッシュに100個の細胞をそれぞれ植え込み、ゲル上に細胞を付着させる。D培養液を吸引除去した後、perflubronを原液のまま加え、perflubron の蒸発を防ぐためディッシュの蓋を密封した後、37゚、5%CO2のインキュベ-タ-で10日間培養する。E培養後出来たコロニ−を数える。perflubron の代わりに培養液のみ加えたものをコントロ−ルとして比較した。またシリコ-ンオイル(ポリジメチルシロキサン)を加えた実験も行い比較してみた。

結果

perflubron及び培養液を加えたもののコロニ−数を比較したところ、細胞生存率に有意差を認めなかった。しかし、コロニ−をよく見ると、コントロ−ルでは細胞が密集しているのに対し、perflubron を加えたものでは細胞が分散している印象があった。シリコ-ンオイルでは細胞生存率にコントロールと有意差を認め、コロニ−の細胞は分散している傾向があった。

考察

ハムスタ−肺癌細胞由来のV79およびヒト肺癌細胞由来のSQ−5を用いてperflubronの細胞毒性が無いことを証明した。しかし、perflubronを加えたものではコロニ−の細胞が分散している傾向があり、 perflubronの比重が大きいため物理的な影響を受けていることが考えられたが、perflubronが疎水性であることが関係している可能性も考えられた。

結語

ハムスタ−肺癌細胞由来のV79およびヒト肺癌細胞由来のSQ−5を用いて細胞毒性が無いことが証明され、perflubronの生体への安全性が高いことが証明された。コロニーを形成する細胞形態については現在検討中である。