第42回日本未熟児新生児学会抄録

Partial Liqud Ventilation の基礎的検討
―FC-84 の細胞毒性試験に関する検討 (第3報)―


小諸厚生総合病院小児科:○山崎崇志
長野県立こども病院新生児科:古庄知己、五石圭司、岩田欧介、松沢重行、
笹野拓也、中村友彦、杉浦正俊、田村正徳
株式会社八光電機製作所技術部生化学研究課:滝沢実

緒言
我々が現在Partial Liquid Ventilationの動物実験に用いているFluorinert84(以下FC-84)の細胞毒性試験について、先の第41回日本未熟児新生児学会・第33回日本新生児学会においてハムスタ−の肺癌由来細胞であるV79細胞・ヒト肺癌由来細胞のSQ−5を用いて細胞毒性試験を行った結果を報告した。今回はヒト胎児肺繊維芽細胞であるを用いてFC-84の細胞毒性試験を行った。

方法
(1)HFL−AE−III細胞を継代培養し、対数増殖期にある細胞を0.2%トリプシンで剥がし計数する。(2)60mmディッシュ内にコラ−ゲン溶液と培養液でコラ−ゲンゲルを作る。(3)ディッシュに100個の細胞をそれぞれ植え込み、ゲル上に細胞を付着させる。(4)培養液を吸引除去後FC-84を加え、FC-84の蒸発を防ぐためディッシュの蓋を密封し、インキュベーターで10日間培養する。(5)培養後出来たコロニ−を数える。培養液のみ加えたものをコントロ−ルとした。

結果
FC-84及びコントロ−ルのコロニ−数を比較したところ、細胞生存率に有意差を認めなかった。さらに、FC−84のコロニ−は、コントロ−ルより大きいにもかかわらず細胞の密集度は同等に見えた。

考察
前回は肺癌細胞由来のを用いてFC-84の細胞毒性が無いことを証明したが、今回はヒト胎児肺繊維芽細胞であるHFL−AE−IIIを用いて同様の結果を得た。さらにV79細胞・SQ−5細胞の場合と異なり、HFL−AE−III細胞の場合ではFC−84の個々のコロニ−を形成する細胞数がコントロ−ルより多くなっていると思われた。

結語
ヒト胎児肺繊維芽細胞由来のHFL−AE−IIIを用いても毒性がないことが証明され、FC-84の生体への安全性が高いことが再び証明された。さらに、FC−84の細胞に与える影響については細胞の種類により異なる可能性が示唆された。