第33回日本新生児学会抄録
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長野県立こども病院新生児科、同麻酔科:石黒秋生、岩田欧介、馬場淳、 松沢重行、笹野拓也、川上勝弘、島崎英、杉浦正俊、田村正徳 株式会社 八光電機製作所 技術部 生化学研究課:滝沢実 |
緒言 | 我々が現在Partial Liquid Ventilationの動物実験に用いているFluorinert84(以下FC-84)の細胞毒性試験について、先の第41回日本未熟児新生児学会においてハムスタ−の肺癌由来細胞であるV79細胞を用いて細胞毒性試験を行った結果を報告した。今回はヒトの肺癌由来細胞であるSQ−5を用いてFC-84の細胞毒性試験を行ったので報告する。 |
方法 | (1)ヒトの肺癌由来細胞であるSQ−5を継代培養する。(2)対数増殖期にある細胞を0.2%トリプシンで剥がし計数する。(3)必要枚数用意した60mmディッシュ内にコラ−ゲン溶液と培養液でコラ−ゲンゲルを作る。(4)ディッシュに100個の細胞をそれぞれ植え込み、ゲル上に細胞を付着させる。(5)培養液を吸引除去した後、その上からFC-84を原液のまま加え、FC-84の蒸発を防ぐためディッシュの蓋を密封した後、37゚、5%CO2のインキュベ-タ-で10日間培養する。(6)培養後出来たコロニ−を数える。FC-84の代わりに培養液のみ加えたものをコントロ−ルとして比較した。またシリコ-ンオイルを用いて同様の実験を行い、コントロ-ル及びFC-84を加えたものと比較してみた。 |
結果 | FC-84を加えたものと培養液を加えたもののコロニ−数を比較したところ、細胞生存率に有意差を認めなかった。しかし、コロニ−をよく見ると、コントロ−ルでは細胞が密集しているのに対し、FC-84を加えたものでは細胞が分散している印象があった。シリコーンオイルでもコロニ−の細胞は分散している傾向があった。 |
考察 | 前回はハムスタ−肺癌細胞由来のV79を用いてFC-84の細胞毒性が無いことを証明したが、今回はヒト肺癌細胞由来のSQ-5を用いて同様の結果を得た。しかし、FC-84を加えたものではコロニ−の細胞が分散している傾向があり、FC-84の比重が大きいため物理的な影響を受けていることが考えられた。ただ、比重が大きくないシリコ-ンオイルを加えたものでもコロニ−の細胞が分散している傾向があり、FC-84が疎水性であることが関係している可能性も考えられた。 |
結語 | ヒト肺癌細胞由来のSQ-5を用いても毒性がないことが証明され、FC-84の生体への安全性が高いことが再び証明された。しかし、FC-84の物理的影響については今後更に検討を重ねる必要があると思われる。現在、コロニ−を形成する個々の細胞の形態的変化について検討中である。 |