第41回日本未熟児新生児学会抄録

FC-84 の細胞毒性に関する検討

長野県立こども病院新生児科1) 同麻酔科2)
現在小諸厚生総合病院小児科3)
現在信州大学医学部小児科4)
○山崎崇志1) 3)、女性医師1)、岩田欧介1)、金樹英1)、
牛久保美穂子1)、島崎英1)、川上勝弘1) 2)、依田達也1) 4)、
馬場淳1)、杉浦正俊1)、田村正徳1)
八光電機製作所 滝沢実

目的 Perfluorocarbon(以下 FC)はその特性から従来の gas-ventilation に代わりpartial liquid ventilation として応用され、より効率的で肺損傷の少ない換気法として期待されている。現在我々が動物実験で主に用いているFC である Fluorinert '84(以下 FC-84)の細胞毒性について検討したので報告する。
方法 (1) V79細胞を解凍し T25フラスコで培養する。(2) 継代培養した後、対数増殖期にある細胞を0.2%トリプシンではがし、計数する。以下2つの実験を行った。実験(1);必要枚数用意した60mmディッシュに100個の細胞をそれぞれ植え込み、細胞をディッシュ底面に付着させる。その上からFC-84を培養液で希釈し加えた。37℃、CO2インキュベーターで10日間培養し、培養液のみ添加したコントロールと比較した。実験(2);コラーゲン溶液と培養液でコラーゲンゲルをディッシュ内に作り、そのゲルの上に細胞を付着させ、上からFC-84を添加した。実験(1)と同様な条件で10日間培養し、コントロールと比較した。
結果 実権(1);FC-84をいくつかの濃度(25, 12.5, 6.25, 2.5, 1.25, 0.625%)で添加したものとコントロールで10日間培養後のコロニー数を比較すると、細胞生存率はいずれもほとんど100%であり、有意差は認めなかった。
考察 実験(1)及び(2)から in vitro では FC-84の細胞毒性はほとんどないと考えられる。
結語 以前我々は FC-84を用いた Partial liquid ventilation を3時間施行した後の家兎の肺病理を検討したところ硝子膜形成はごくわずかであると報告した。今回の細胞毒性実権はin vitro の結果ではあるが、FC-84の細胞毒性はほとんど認められず、前回の病理所見の検討結果と合わせるとFC-84の身体への安全性はかなり高いのではないかと推察する。